法律の話はほとんどしない
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顧問先に訪問したとき、労務関係の手続きや法律の話は、ほぼしません。
社長の近況をお聞きします。
社労士業務に関係のない話であっても、そんな会話を社長とすることが、
とても重要だと考えています。
人は、自分が望んでいない情報を届けられても、キャッチできません。
私が「労務の法律がこう変わって、こんな手続きが必要で…」と
一方的に話したとしても、社長の耳には届かないのです。
法律的なことをお伝えするよりもまず、社長と良好な関係性を築くことが、私にとっては重要。
だから、職場の話、家族の話、趣味の話など、いろいろなことを社長に聞かせていただきます。
つまり、傾聴しています。
これによって、社長に喜んでいただいた事例をお話します。
時代に取り残されていた就業規則
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知り合いの税理士さんから、ある会社社長をご紹介いただいたときのこと。
その会社には就業規則がありましたが、7年前に作ったものを使い続けており、
時代に合わなくなっていました。
しかし、社長にお会いした当初、私は「就業規則を見直しましょう」とは言いませんでした。
まだ信頼関係ができていないのに、そうしたご提案をすると、売り込みになると思ったからです。
私はまず、社長のことをいろいろと知りたいと思いました。
その社長は、お父さんが早くに亡くなったため、若くして会社を継承されていました。
お父さんの時代は、身内が役員として入っていたが、会社の今後を考えて、
身内には退いてもらったとのこと。
そんな身の上話をたくさんお聞きしました。
ある日、社長のほうから「就業規則を見直したい。全部お任せします」という依頼がありました。
大幅な見直しとなるため、かなりの費用がかかることをお伝えすると、
「それでいいです。長くお付き合いしたいので」と言って、快くOKを出してくださいました。
きっと、労務とは関係ないさまざまなお話をする中で、私を信頼してくださったのだと思います。
全部任せる、と言っていただけたことが、とてもうれしかったことを覚えています。
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福祉施設の経営者が抱えていた「ある悩み」
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もう一例は、福祉施設の事例です。
ある介護施設の経営者から、こんな相談を受けたことがあります。
「社員が退職したため、代わりに自分が介護職員として現場に出なければならなくなった。
おそらく『処遇改善加算』がつくと思うので、これを従業員に分配し、給与を少しでも上げたい」
処遇改善加算とは、職員の報酬を上げるための制度です。
この制度は、現場で働く介護職員が対象となりますが、その経営者は、
自分も介護職員となって働いた分、処遇改善加算が受けられると思っておられました。
ところが、お付き合いのあった行政書士から、「それは無理です」ときっぱり言われてしまったのです。
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このケースの場合、行政書士さんが言う通り、処遇改善加算を分配するのは無理でした。
というのも、処遇改善加算は職員につくもので、経営者にはつかないからです。
いくら現場に出て働いても、経営者である以上、この加算を受け取ることはできません。
だから、それを分配することもできないのです。
でも、その経営者は、一円でも職員の給与を上げたい、という思いを持っていました。
私は「難しいかもしれないが、もしかしたら市町村によって対応が違うかもしれない。調べる時間をください」とお伝えしました。
調べた結果、やはり無理だということが分かりました。
でも、その経営者は、調べてくれただけでも有り難い、と喜んでくださいました。
社労士の業務には、法律が絡みます。
どんなに経営者が望んでも、法律上難しい場合は、どうしようもありません。
でも、何か良い方法はないか、いっしょに考えることはできます。
明解な答えが出ないこともあるし、これだ!という解決策が見つからないこともあります。
それでも私は、経営者に寄り添い、知恵を出したいと思っています。
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