承認が安心と安全を生む
私はよく、顧問先から「親身になってじっくり相談に乗ってくれる」と言われます。
とてもうれしい言葉なのですが、
私にとって、
親身にお話を聞いたり、相談ごとをお聞きするのは、当たり前のことになっています。
それを行うことが、安心安全な職場づくりにつながると思っているからです。
安心安全の第一歩は、相手を「承認」すること。
承認によって変わっていった会社の実例を2つご紹介します。
面接を変えたら社長が変わった
ある清掃会社の社長が、従業員がいないので求人を出したいと要望されました。
人の目に止まりやすい求人票の作成などをサポートした結果、2名の採用が決まりました。
ところが、わずか1ヶ月で離職してしまったのです。
話を聞くと、社員が「家庭の事情で辞めたい」と言ってきたとき、
社長はすぐに「わかった」と答えたそうです。
社員の事情を尊重してOKしたとのことですが、
社員のほうは、社長がすぐに離職OKを出したことで、
「自分はこの会社にとっていらない人なんだ」と思い、
失望して会社を去ったことが分かりました。
もしかしたら、社長の接し方に課題があるかもしれない。
そう思い、社長に対して「承認」の研修をさせていただきました。
すると、採用面接が大きく変わったのです。
社長は、社員にはいずれ独立してもらい、関連会社となっていっしょに発展したい、
という願望を持っていました。
しかし、面談の席では、そうしたことに触れることもなく、
相手に関心を持つこともなく、ただ淡々と面談をこなしていたに過ぎませんでした。
それが、「承認」の研修を経ることで、相手に興味を持つようになり、
これまでどんな仕事をしてきて、
これからどんな仕事をしたいのか、
スムーズに聞き取りができるようになりました。
社長は言います。
「おれ、成長できたかも」
ただ漫然と採用を決めていたころと比べると、社長のマインドが劇的に変化したのです。
うつ状態の社員が自信を取り戻した
もう一つは、労務顧問をしているIT企業の例です。
その会社には、メンタル不調を抱えた社員がいました。
ちょっとしたことで外に出られなくなっていたのです。
例えば、雨が降るだろうと思って傘を持って出たら、まわりの人が誰も傘を持っていない。
それを見て「自分はダメだ…」と落ち込み、顧客先に行くことすらままならない状態でした。
私は、その社員に直接会ってみることにしました。
暗い表情をしているのかと思ったら、外見はいたって普通。
メンタルを病んでいるようには見えませんでした。
しかし、どんなに普通に見えても、
問題を放置すれば、本人にとっても会社にとってもよくありません。
私は1週間後、もう一度その社員に会い、会話の中でたくさん承認しました。
数日後、社長の奥様から、その社員について連絡がありました。
「自信がついたのか、お客様のもとにうかがえるようになりました。感謝しています」
承認によって、自分はダメだと思う気持ちから解放されたのでしょう。
改めて、承認の力の大きさを実感しました。
安心安全な会社が一社でも増えるといい
顧問先の会社に新しい人が入社すると、私は必ずこう聞いています。
「新入社員さんはいま、どんな感じですか?」。
また、従業員のどなたかが長期休業していることを耳にすると、
「その後、どうなりました?」と聞きます。
とある社長から、
「ほかの社労士は、そこまで突っ込んで従業員のことを聞かないよ」
と言われたことがあります。でも私は聞きたいのです。
なぜなら、働く人が安心安全に働ける職場が増えてほしいからです。
ここにいていいんだ。ここが居場所なんだ。
そんなふうに感じられる職場が、安心安全な職場。
そんな環境をつくるお手伝いを、私はしたいのです。